愛知県の南部にある渥美半島、サーフィンのメッカでもある全日本ビーチや赤羽根西海岸からほど近い、民家と農地に囲まれた自然豊かな環境に建つ木造平屋の宿である。
地域の特性を活かした、スポーツツーリズムや農業・酪農・漁業等、食育にも通ずるレジャー等の体験型の宿を軸に、インバウンドを想定した日本的な趣きのある建物を求められた。
敷地は隣地建物に囲まれた旗竿敷地であるが、否定的な囲われ感を日常から離れ過ごす宿として、守られた安心感に変わるよう、建物は敷地中央に配置し周囲からの視線や生活音から守られるよう、建設発生土からなる築山と樹木や草花で覆うように緑化した。
建物は敷地を有効利用できるよう、全方位的な単純な楕円状とし、木軸組の上に垂木を笠状に配置し、最長9mある垂木構造は仕口の簡易化とコスト軽減のために2×12材で構成した。
室内全体は木の骨組み表しと漆喰壁(真壁)で構成されており、室の半分を占める土間(居間、キッチン)空間は、海岸で採取した貝殻の洗い出し仕上げや流木の化粧で地域性を表現した。
日中は低い軒から臨む室内からの視界や頂部から零れ落ちる柔らかな自然光が、落ち着きと非日常感を演出し、夜間は囲炉裏の火が周囲の自然素材と相まって居心地の良さを誘発している。
また、正面の扉を全開すると外部との一体利用が可能であると共に、室全体に自然風がまわり断面構成上 重力換気を促進する。
外部は敷地環境になじむことを念頭に、屋根は民家の入母屋を意識した形状とし、重量と塩害の観点からアスファルトシングル葺き、外壁は潮風からの耐候性、防腐性また周辺地域との調和性から焼杉とした。
建物を囲む庭は、室内とのつながりを意識した計画としている。
動的な土間とつながる南庭は、彩り豊かな草花を眼前に望み、キッチンやファイヤーサークルのあるバーベキュースペース、シャワー、パーキングなどアクティブな庭とし、静的な寝室とつながる北庭は、隣地建物を土羽や樹木で柔らかく隔てクローバーや下草の緑のカーペット状とし、キャンプのテントスペースやハンモックでくつろげる穏やかな庭とした。
用途:宿
構造:木造
規模:地上1階 延べ床面積 85.12㎡























